1. サキタリ人骨、クリーニング中

サキタリ人骨、クリーニング中

最終更新日:2015.07.30

近ごろ毎年のように世間をお騒がせしているサキタリ洞遺跡ですが、昨年11月には9千年前より古い地層から埋葬の可能性が高い人骨を発見してしまいました。毎度お騒がせして、ホントごめんなさい(←調子に乗ってる感じで)。あの人骨、今まさに博物館でクリーニング中です。今回は特別に、その様子をご紹介しましょう。

我々が発掘したとき、脚の骨は既に失われていましたが、上半身の骨はほとんど全部ありました。形もかなり残っていましたが、掘ってみると意外にも化石化は進んでいません。そのため、一部の骨はあまりにモロく、現場で接着剤をぬって固めたり、周辺の土ごと大きな塊で取り上げなければなりませんでした。
苦労して持ち帰った人骨は、博物館で時間をかけて、ヒビ割れないようゆっくりと乾燥させます。どうやら十分に乾燥して状態も落ち着いてきたところを見計らって、いよいよクリーニング、やっちゃいますか!

そんな具合に作業を開始したものの、乾燥した土は固まってカチカチ、けれども骨はポリポリで、なかなか思うように土を取り除けません。勢いあまって骨を壊せば一貫の終わりです。額にヒヤリと汗しつつ、竹串や解剖針、ピンセットなどを使って、少しずつ土を落としていきます。どうしても固まって落ちない土は、綿棒でアルコールをちょっと塗ると、湿って少しやわらかくなります。でも、骨をぬらせば骨が柔くなってしまうので、綿棒を持つ手もプルプル震えます。息をとめて脇をしめ、集中して少しだけチョンと塗ったら、乾かないうちに手早く竹串でカリカリっと土を欠き落としましょう。時には顕微鏡で拡大して、注意深く作業します。

でも、世の中きびしいもので、どれだけ慎重を期しても、小さな破片がポロリと落ちてしまうことがあります。「ああ!しまった!」と絶望感に襲われますが、そんなときは慌てず騒がず、深呼吸をして心を落ち着け、その場ですぐに接着することが肝要です。

土カチカチの骨ポリポリを、おでこヒヤヒヤ、手はプルプル、息トメ脇シメ綿棒チョンで、竹串カリカリです。そんな作業をいちにち繰り返せば、肩はコリコリ、目はショボショボ、体も心もヘトヘトです。疲れると失敗するので、そうなる前に適切に休憩をとりましょう。

「早く顔が見たい!」という皆さんの気持ち、わかりますとも!でも、もうちょっと時間をください!来年度(平成28年度)予定している旧石器関係の特別展には、きっと間に合わせます。それまで、首を長~くして、楽しみにすればいいじゃない!きっと素敵なサキタリ洞人の顔を、夢にまで見ちゃえばいいじゃない!

鳴かぬなら、鳴くまで待ってね、ホトトギス。

写真1:9千年前より古い地層から見つかった人骨。頭から骨盤までが見事に残っている。

写真1:9千年前より古い地層から見つかった人骨。頭から骨盤までが見事に残っている。

 
  • 写真2:解剖針などを使って少しずつ土を落とす。うーん、緊張するぜ…と思っている。

    写真2:解剖針などを使って少しずつ土を落とす。うーん、緊張するぜ…と思っている。

  • 写真3:頭骨のクリーニングを進めると、割れているものの顔のパーツがかなり残っている。これはきっと、顔わかっちゃうね!

    写真3:頭骨のクリーニングを進めると、割れているものの顔のパーツがかなり残っている。これはきっと、顔わかっちゃうね!

主任 藤田祐樹

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