1. 考古部門収蔵庫の逸品(Ⅲ)-名蔵シタダル遺跡の陶磁器群-

考古部門収蔵庫の逸品(Ⅲ)-名蔵シタダル遺跡の陶磁器群-

最終更新日:2014.07.31

写真1 名蔵シタダル遺跡のある名蔵湾

写真1 名蔵シタダル遺跡のある名蔵湾

写真2 陶磁器群の一部 (サンゴ等が付着している)

写真2 陶磁器群の一部

(サンゴ等が付着している)

表1 陶磁器の構成

表1 陶磁器の構成

考古部門収蔵庫の逸品シリーズ第3弾です。このコーナーでは常設展や部門展示には展示されていませんが、いつでも展示することができる、とても興味深い遺物を紹介しています。
今回は石垣島の資料です。石垣島の名蔵湾には、名蔵シタダル遺跡(写真1)と呼ばれる、中国やタイで生産された多量の陶磁器が海底に眠っている海域があります。これらの陶磁器は、ほとんどが15世紀中頃に生産されたものです。どうしてこのように同じ時期に生産された陶磁器が海底に存在するのでしょうか。
答えは、この遺跡が貿易船に関係するものだからです。貿易船が海難事故に遭遇し、船そのものが座礁・沈没したか、船が沈むのを防ぐために、重たい積荷である陶磁器の投棄を行った結果、このような遺跡が形成されたと考えられています。
この遺跡は、石垣島の研究者、大濱永亘氏によって発見されました。その後、様々な研究者によって調査されていますが、当館に収蔵されているものは、1960年~1962年にジョージ・H・カー博士によって収集されたものです。
それはそれは膨大な数の陶磁器が収集されているのです。陶磁器にはサンゴ等の多量の石灰が付着していることからも、長い間、海底に露出していたものであることを如実に物語っており(写真2)、海難事故の悲惨さが伝わってくるようです。
昨年の夏、大学生の博物館実習の一環としてこれらの陶磁器の調査を行いました(表1)。その結果、陶磁器には青磁、白磁、青花(せいか)、褐釉陶器(かつゆうとうき)が含まれていることがわかりました。また、器種は、青磁には碗・皿・盤(大きな皿)・壺・香炉が、白磁には皿、青花には碗・皿、褐釉陶器には壺・擂鉢があることがわかりました。それらを分類し、カウントしたところ総数1736点!その内、青磁の碗が1179点と圧倒的に多いことがわかりました。次いで白磁の小皿が138点、青磁の盤が101点となっています。逆に、青磁の壺や香炉等は極めて少なく価値が高いものだったことが推測されます。このように調べることによって、1船の貿易船に積載されていた陶磁器の構成を知ることができます。
これらの陶磁器が生産された15世紀中葉の沖縄本島は三山時代が終わり、琉球王国が誕生した時期です。この後、琉球王国は宮古島・八重山諸島を次々に支配下に納め王国の版図は拡大していきます。貿易船の積荷で形成された名蔵シタダル遺跡は八重山が未だ琉球王国の統治下に含まれていない時期の遺跡と考えられます。これらの陶磁器はいったい何処へ運ばれるハズだったのでしょうか。届かなかった陶磁器たちは、数百年の時を経て、今も石垣島名蔵湾の海底に、そして当館の収蔵庫にひっそりと眠っています。


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今年度の博物館特別展は「水中文化遺産~海に沈んだ歴史のカケラ~」を開催予定です。
会期は平成26(2014)年11月8日(土)~平成27(2015)年1月18日(日)、ただ今準備中ですが、今回、そして前回、前々回のコラムで紹介した名蔵シタダル遺跡の陶磁器(今回)やイギリス船インディアン・オーク号の積荷(前回)、オランダ船ファン・ボッセ号の積荷(前々回)は当然展示します。
みなさんぜひご来館下さい。

主任学芸員 片桐千亜紀

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