1. 博物館企画展「三線のチカラ-形の美と音の妙-」に寄せて(1)―三線の形の魅力-

博物館企画展「三線のチカラ-形の美と音の妙-」に寄せて(1)―三線の形の魅力-

最終更新日:2014.01.30

博物館主催の三線展は過去2回ある。昭和63年(1988)の「三線名器100挺展」と平成11年(1999)の「三線のひろがりと可能性展」。今回は、あれから15年ぶりの開催で、新博物館になって初の三線展を2月18日から5月11日まで開催する。

今回のテーマは三線の潜在力、ずばり「三線のチカラ」にした。また、副題として「形の美と音の妙」を付した。チカラに内在する二つの要素を示したつもりだ。三線展初のハワイ所在三線も3月中旬までの期間限定で借用した。世界中で大切にされる沖縄発の三線に敬意を表し、内外のより多くの方々に三線の魅力を理解いただくために、ポスターや展示内容においても英語表記を試みた。当館初の「開鐘の競演」と題する音楽CD付き図録も可能な限り英訳をつけることにした。

展示会の英語タイトル名は「The Power of Sanshin: Its Beautiful Shape and Inspiring Sound」。三線のパワー、そして三線の形(型)に美意識をもつことや、人々に癒しを与え、生きる勇気を与える三線の音を表現したかった。第1回目は、その三線の形の魅力について紹介したい。

今から約20年前、『沖縄の文化財Ⅲ 有形文化財編』(沖縄県教育委員会1995)の編集を担当した。それは美術工芸品と建造物を「有形文化財」として収録したフルカラーで英訳を付した文化財の普及書であった。担当の私は、三線を所蔵する家々を廻り、三線をより美しく撮影したいという思いから、各家の一室をスタジオに見立て、写真屋さんで使用するようなグレーの背景紙を壁に張り、その前に家宝三線を置き、スライド用フィルムで撮影したことが懐かしく思い出される。その中には、同年6月に自ら調査し、県指定文化財として新たに追加指定された9挺の三線が含まれた。その成果が、文化財の本に掲載されることに喜びを感じたものだ。撮影のポージングは正面のみから捉えることに終始した。その時は、実は三線の本当の形の美しさには気づいていなかった。

今回、これら三線を20年ぶりに撮影する機会に恵まれた。所有者から事前に借用させていただき、同一の条件のもとで当館の写真撮影室で撮影させてもらった。その優美なプロポーションを十二分に発揮できるように撮影した。展示会の図録には、1挺あたり6枚以上のカット写真でその美を収録したつもりである。三線たちは、まるで美しいモデルの如く様々な角度から自身のその美しさを表現してくれた。左右斜め45度、左右の真側面、正面、天の反り具合、爪裏のノミ痕、木地そのものを表す心部分、といった具合だ。そのフォルムや表情は妖艶ですらある。かつて南風原、知念、久場、真壁、平仲、与那城がいた。王国時代の三線名工たちの名前である。彼らは電動ノコや糸ノコを使ったわけではない。ひとカンナ、ひとノミずつ、時間と労力を費やして、シンメトリックな美を追求し、天(チラ)の微妙な緩やかなカーブ、鳩胸の出っ張りを成形し、また絃を張る棹の弾力と振動をイメージして豊かで艶やかな三線の音を創造した。木地の肌が表れる心部分のノミの削り痕に、昔日の名工たちの息遣いが聞こえてくるようだ。

そして、なによりもこの500~800gの小さな棹(木棒)の世界に美意識を感じ、時代を越えた形(型)の継承を図る三線文化を共有する人々がこの世に存在すること、そのことが実はすごいことだと思う。

沖縄県指定有形文化財 三線盛嶋開鐘 附胴 各アングルからの写真

沖縄県指定有形文化財 三線盛嶋開鐘 附胴 各アングルからの写真


 

主幹学芸員 園原謙

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