ホタルの光!?

最終更新日:2012.06.22

写真1

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写真2

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夏の夜、淡い光を放ちながら飛行するホタルは、初夏の風物詩となっていますが、子どもたちにとってもホタルは格好の遊び相手(道具?)でした。沖縄でも童謡「ジンジン」が古くから親しまれてきたように、「ジーナー(ジンナー)トゥエー(ホタル狩り)」は子どもたちの楽しみ(遊び)の一つでした。そして、捕かまえたホタルの入れ物(楽しみ方)も沖縄独特で、地域ごと(沖縄島、宮古諸島、八重山諸島)にも違ったものになっています。
沖縄島での入れ物(楽しみ方)として特に多いのが、「ンム(サツマイモ)」です。ふかした「ンム(サツマイモ)」をよく練って、薄く団子状にしたものに窪みをつけ、その中にホタルを入れて闇夜に浮かび上がる青白い光を楽しむというもので、「ジンジンビー(ホタル火)」とも呼ばれていました。
宮古諸島では、ホタルは「ヤーンブ」と呼ばれ、その入れ物(楽しみ方)も、宮古独特のものです。何を入れ物の材料として利用するかというと、「テリハボク」の実(写真1)です。宮古で「ヤラウギー」と呼ばれる「テリハボク」は、台風や潮風に強いので、昔から海岸沿いや屋敷の防風林などに用いられ、現在でも沖縄全域で街路樹などとしてよく植えられている樹木です。実の果肉の部分をはぎとり、中の固い種子の表面にクギなどを使っていくつかの穴をあけ、さらに種子の中身を取り出して空洞にします。それを棒に結んだ糸につければ「ホタルちょうちん」の完成です(写真2)。夕方、ホタル狩りをして何匹かをその中に入れ、あけた穴からもれる光を楽しみました。  八重山諸島でホタルは、「ジンジンパーレー」(石垣)、「ジ ンジンパー」(川平)、「ピッカラ」(竹富島) などと呼ばれ、宮古と同様に「ホタルちょうちん」に入れて楽しみました。ただその材料は、「テリハボク」の実ではなく、「ハスノハギリ」の実(総苞)です(写真3)。八重山で「トーナチ」などと呼ばれる「ハスノハギリ」も、昔から海岸沿いや屋敷の防風林などに用いられてきた樹木です。半透明の2つの「トーナチ」の実(総苞)の中の黒い種子を取り出し(写真4)、1つの実の中に何匹かのホタルを入れ、もう1つの実を下からかぶると「ホタルちょうちん」の完成です(写真5)。私も実際に中にホタルを1匹入れて観察してみましたが、半透明のその「ホタルちょうちん」の中で青白く光るホタルの光は本当に幻想的なものでした。
「ンム(サツマイモ)」や「ヤラウギー(テリハボク)」、「トーナチ(ハスノハギリ)」などの身近な農作物や植物を利用して、ホタルの光を楽しんで(遊んで)きた先人(子ども)たちの発想の豊かさには驚かされます。また、暗闇の中でその淡く青白い光を愛でる風流な心の響きを感じずにはいられません。

  • 写真3

    写真3

  • 写真4

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  • 写真5

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主任学芸員 岸本 敬

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