土器の科学

最終更新日:2012.01.27

写真1 土器から切片を切り出す

写真1 土器から切片を切り出す

写真2 スライドグラスへの接着

写真2 スライドグラスへの接着

沖縄では、毎年約30-40件ほどの遺跡の発掘調査が行われています。 みなさんの家の近くでも発掘調査が行われているかも知れませんね。遺跡には、大昔のムラの跡や貝塚、お墓など、いろいろな種類がありますが、どの遺跡を発掘しても、昔の人々が食べた貝殻や動物の骨などと一緒に、土器のかけらがたくさん発見されます。土器というのは、今でいうと鍋や茶碗のようなもので、日常の食器として使われていた道具です。
沖縄の考古学では、遺跡から見つかる土器を細かく分類して、非常に精密な年表を作る作業が行われています。現在では、約6000年分の土器年表がほぼ完成していて、専門家であれば、遺跡から発見される土器を見て、だいたいその遺跡がいつ頃の遺跡なのかがわかるようになっています。このような考古学の方法は、アンモナイトや恐竜の化石を観察して、だいたいいつ頃のものかを推定する地質学の方法によく似ています。
地質学では、岩石を見てその岩石が何なのか、どこのものなのかを考えます。遺跡から出てくる石器も、岩石の専門家が見れば、どこから持ってきたものなのかがわかることがあります。同様に、土器の中に含まれている岩片や鉱物から、土器の産地が推定できる場合もあります。土器の中に含まれている岩片や鉱物を科学的に分析するためには、土器の一部を切り取って(写真1)、スライドグラスに接着し(写真2)、研磨して偏光顕微鏡用の薄片に仕上げます(写真3)。

写真4は、南城市サキタリ洞産の約4500年前の土器(条痕文土器)の顕微鏡写真です。写真中央に平行四辺形の岩片が見えます。この岩片は沖縄島中北部の名護層や嘉陽層に見られる千枚岩で、白く見える部分は石英脈です。写真5は那覇市首里産の約4000年前の土器(仲泊式土器)の顕微鏡写真です。白い石英脈の入った暗灰色の円礫が多く含まれているのがわかります。この円礫はチャートで、沖縄島では本部半島に分布する岩石です。

このように、沖縄島南部で発見された先史時代の土器の中に含まれる岩片や鉱物を調べると、沖縄島中北部にしか分布しない岩片が多く含まれていることがわかりました。このことから、沖縄島南部の先史人たちは、沖縄島中北部から土器または土器作りの材料となる粘土を取り寄せていた可能性が考えられます。

なぜ、沖縄島南部の先史人たちは、わざわざ遠いところから土器を取り寄せていたのでしょうか?皆さんはどう思いますか。

  • 写真3 完成した薄片

    写真3 完成した薄片

  • 写真4 薄片の顕微鏡写真 (千枚岩片)

    写真4 薄片の顕微鏡写真
    (千枚岩片)

  • 写真5 薄片の顕微鏡写真 (チャート円礫)

    写真5 薄片の顕微鏡写真
    (チャート円礫)


 

主任 山崎真治

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